【書評】マーケティングの未来と日本 フィリップ・コトラー著
20字でまとめると・・・
コトラーマーケティング理論の日本向け
コトラーという名前は知っていたが、今まで読む機会に恵まれなかった。とりあえず図書館で借りて読んでみたが、ビックリ!
もっと早く読んでおけばよかった・・・。というぐらい素晴らしい本。
行動経済学とはマーケティングそのもの
最近話題の行動経済学。
古典派経済学は、「消費者・仲介者・生産者がそれぞれ合理的に動く」というのが前提に組み立てられているが、そこに人間の行動という理解不能な変数がない。それをよく研究したものが行動経済学。
つまり古典派経済学は、ロボットとか、合理的にしか動かない人に対しては効果がある。人間は不可解な行動が多いので、行動経済学と古典派経済学がミックスされたものでテストを繰り返すこと。
マーケティングとブランディングのちがい
ブランディングはマーケティングの一部。マーケティング=広告宣伝、のようにも思われているが、広告宣伝もあくまでもマーケティングの1つのステップに過ぎない。
4Pは大前提
まずは4Pで分析して、他社との違うポジションを見つける。安売り競争は「あそこより安い」という差別化しかできていない。priceのみ。
- product
- price
- place
- promotion
コトラーはこれに二つ加えている。
- political power(政治力)
- public relations(広報活動)
また、サービス業の特徴として
- 無形性(触れられず、目に見えない)
- 不可分性(提供者・被提供者と切り離せない)
- 変動性(いつどこで誰によって、でサービスが変わる)
- 消滅性(モノじゃないので、蓄えられずに消える)
以上の4つがある。だから上記の4Pに加えて
- people(要因、どんな人が提供するか。能力の高い人とは限らない。下手だけど美人マッサージ師とか。)
- process(業務プロセス、支払いや顧客管理などの改善)
- physical evidence(物的証拠、高級ホテルの制服や食の安全など。ハロー効果を狙う??)
が加わる。体験や感情重視。
マーケティング3.0に必要な考え方
- 顧客を愛し、競争相手を敬う
- 変化を敏感にとらえ、積極的な変化を
- 評判を守り、何者であるかを明確に
- 製品からもっとも便益を得られる顧客を狙う
- 手ごろなパッケージの製品を公正価格で提供する
- 自社製品をいつでも入手できるように
- 顧客を獲得し、つなぎとめ、成功させる
- 事業はすべて「サービス業」である
- 納期のビジネスプロセスの改善を
- 情報を集め、知恵をしぼって最終決定を
マーケティング4.0
- マーケティング1.0 製品中心 広告をだして売れるのを祈る
- マーケティング2.0 顧客志向 戦術⇨戦略へ。4P+STP。Segmentation(市場細分化)、Targeting(ターゲット選定)、Potisioning(ターゲット顧客の頭の中で独自ポジションを築き、差別化イメージを植え付ける)。専門化がすすむような感じ。例えば保険会社のそれぞれに合った細かい商品など。これに乗じて口コミも非常に効果的になった。「消費者参加型」とか。売っている商品を使って、作品を応募させて表彰するとか。ユニクロのオーダーTシャツとか。
- マーケティング3.0 価値主導 企業のミッション、ゴミ問題など。例えば保険会社。顧客が長生きすれば、それだけ保険料がもらえる。長生きの助けになるような商品開発をする。社会的責任が重要になる。
- マーケティング4.0 自己実現のマーケティング。マズローの欲求五段階説の一番トップに君臨する。自己実現をするために消費をする。
5A(購買決定プロセス)
- awareness(気づき)まず知ってもらう
- appeal(魅了)競合より良い製品であることをアピール。4Pを用いて。
- ask(尋ね、求め)レビュー検索や直接問い合わせ、検索エンジンやSNS
- act(行動=購買)ネットとリアル両方で起こる
- advocacy(推奨表明)SNSなしでは成立しにくい
後半3つのAはインターネットにより重要度が増している。
体験型マーケティング(2.0)は需要ではなく感情に働きかける⇨感情マーケティング
4Eが重要
- entertainment(娯楽性、工場見学など)
- esthetic(美的要素)
- escape(非日常性)
- education(教育的要素)
都市にこそSWOT分析
都道府県単位でSWOT分析をやるべき。行政にもマーケティング思考を導入すべき。
- strength(強み)
- weaknesses(弱み)
- opportunities(機会)
- threats(脅威)
内部環境と外部環境の分析を行うこと。
垂直思考ではなく水平思考
考える力を鍛えるために、常に水平思考で。
子供が野球が好きなら、打率計算などから数学が好きになるかもしれない。子育てにも十分使えそう。
いわば学者が書いた本なので、難しいのかなーと思ったらそんなことはまったくなかった。
日本向けに書いた本ということだが、それほど日本向けという気もしない。コトラーの他の本を読んでも、理解はできる内容だった。